たまねぎ、まだまだ頑張る！ [┣小ネタ]
『モーグリ気ぐるみ』お願いが終わったとはいえ、まだまだ覚える事がいっぱいのたまねぎ。
今回は、ティーダにケーキ作りを教わっています。
ところで、9人分の『モーグリの気ぐるみ』は誰が作るのか？
本命⇒コスモス(＋委員長)、対抗⇒セシルとゴル兄、大穴⇒委員長(＋のばら)、無印⇒スコール＆クラウド。
【初めてのスポンジケーキ】
10「材料は全部メモったか？」
3「うん、準備は万端だよ」
10「作り方の順番も書いたな？」
3「もちろんさ」
10「じゃ、注意事項な」
3「いつでもいいよ」
10「材料はきっちり計って準備しとく、卵は常温、粉は最低三回ふるいにかける、泡立てはしっかり、粉を混ぜる時に泡をつぶさない、ダマにしない、焼いてる途中で釜を開けない」
3「ちょっと待って！ 説明が早くて追いつけないよ！」
10「んじゃ、ゆっくりもう一回な！ 特別サービスだかんな！」
9「ネギは何を作る事になったんだ？」
5「基本中の基本のスポンジケーキ、ティーダが得意って言ってたから任せてる」
9「簡単なのか？」
5「いや、基本だけど簡単じゃない」
9「おいおい、大丈夫なのかあ？」
5「本当はもっと簡単で失敗しないムースかナンかにしようと思ったんだけど」
9「わざわざ難しいのに替えたのか？」
5「うん、デコレーションに個性が出やすいし、本人がやる気満々だから、ティーダと相談してちょっとハードルを上げてみた」
9「ふ～ん」
5「それに、スポンジケーキだと、前の日に焼いて当日にデコレーションってスケジュールを組めるから、オニオンにもおれたちにも余裕が出来る」
9「へ～、そうなんだ？」
5「何よりも、オニオンは一個しか作らないから、適度な緊張をキープしつつ、その一個に目一杯の愛情を込めて作って欲しいんだよね」
9「料理に愛情は大事だよな！」
5「だな！」
9「いつもバッツの愛情たっぷりな飯食ってるスコールが羨ましいぜっ！」
5「ジタンだって、おれの愛情たっぷりな飯食ってるだろ？」
9「ま、友情たっぷりの飯も嬉しいけどな！」
10「よーし！ じゃ実践だぞ！」
3「うん、さっさと始めようよ」
10「こぼさないように丁寧に材料を計れよ！」
3「計ればいいんだね？ こんなの簡単だよ！」
10「こぼすなよ！ 特に砂糖と粉な！」
3「手元が狂うから、ちょっと黙ってて！」
10「……」
3「……はふ、終わったよ」
10「計る時に、息は止めなくていいんだぞ？」
3「だって、息で粉や砂糖が飛んだら困るじゃないか？」
10「ま、この程度息を止めても死なないからいっか！ よし次！」
3「バターを溶かし、焼き釜を温めておく、と」
10「よーし、順番は間違ってないな」
3「卵を割り砂糖を加え、混ぜるべし混ぜるべし……？」
10「ここは力仕事だから、頑張れよ！」
3「ねぇ、この前バッツが片手で卵を割ってたよね？ アレのやり方教えてよ」
10「おいおい、初心者は両手で丁寧に割んねーと、殻が入っちまうぞ！」
3「でもあの片手割り、簡単そうだったよ！」
5「ん、まー、形から入りたい気持ちも分からなくないから、気の済むようにやらせてみたらいいんじゃないか？」
10「殻ジャリジャリのケーキをティナに食べさせるっスか？」
5「どうせ今日のは試作で、食うのは男ばっかだ！ 気にすんなって！」
3「……っ！ あっ！」
10「ほら、言わんこっちゃないだろ！」
3「……っ」
10「仕方ねーから、入っちまった殻は極力全部除く！」
3「……」
10「残りは両手で丁寧に割れよ！」
3「……分かったよ」
10「何とか卵が割れたら、あとはひたすら泡立てだ！」
3「これを回せばいいんだね？」
10「遅い！ もっと早く！」
3「……もっと？」
10「もっと早く！」
3「……っ！」
10「よし！ そのスピードキープな！」
3「……まだ続けるの？」
10「まだ全然！」
3「……まだ？」
10「もっと白くなって、角が立つ手前まで泡立てるっ！」
3「かき混ぜてるだけで、本当に白くなんてなるの？」
10「オレを信じろって！」
9「角が立つってナンだ？ オレ、委員長の兜を思い浮かべたんだけど……」
5「生クリームの上がピーンと立ってる感じを「角が立つ」って言うんだ」
9「へぇ～」
3「……はぁ、はぁ」
9「なあ、ネギがバテてきてないか？」
10「まだまだぁ！」
5「確かに、ノリが体育会系になってきてるな」
3「ちょっと、……休みたいんだけど」
10「泡立ては一気にやらなきゃダメだ！ 突っ走れーっ！！」
3「……っ！」
9「ティーダがスパルタ先生に見える」
5「美味しいケーキには、愛情と体力が必要なんだ」
3「……ふぅ、ふぅ」
10「うん、まあ、このくらいでいっか！ この感じ、よ～く覚えとけよ！」
3「……うん、……はぁはぁ」
10「ほら、モタモタしないで粉をふるって中に入れる！」
3「ふ、ふるう？」
10「これがふるい、この中に粉を入れて周りをとんとん叩くと、ふるいにかけられた粉が下に落ちっから」
3「……うん」
10「強く叩くとこぼれっから、気を付けろよ！」
3「うん……(トントン)」
10「そんなにソーっとやってたら、明日になってもケーキ焼けないぞ～」
3「強く叩くなって言ったじゃないか」
5「ティーダ、最初くらいお手本見せてやれば？」
10「了解ッス！ 強さはこのくらい、リズミカルにトントンとな！」
3「……最初から見せてくれればいいのに……」
10「卵に粉を入れる時は、いっぺんに入れんなよ」
3「……」
10「そうそう、下からすくって、さっくりとダマにならないように掻き混ぜる！ 混ぜすぎんなよ！」
3「ティーダ、どれくらいが混ぜ過ぎかなんて、僕には分からないよ」
10「今日はオレが見ててストップって言うから、それまでサックリと掻き混ぜろ」
3「うん」
10「よーし、ストップ！」
3「……ふぅ」
10「続けて溶かしバター投入う！」
3「溶かしバター、と」
10「ムラにしないように掻き混ぜるぅ！」
3「……っ」
10「よーし！ 後は容器に流し込んで空気抜きしたら、焼き釜に入れるぞ！」
3「空気抜き？」
10「容器ごと、20cmくらいの高さからトンと落とせばいいんだ」
3「……こう？」
10「で、焼き釜に入れて20分～25分くらいかな。途中で釜を開けると、膨らまなくなるからな！」
3「ふぅ～……」
10「よし！ 焼きあがったら、今日はここまでだ！」
3「え？ デコレーションとかは？」
10「スポンジケーキは一日置いた方が美味くなるから、飾りつけは明日だ！」
3「へえ、そうなんだ？」
10「だから、ティナの誕生日前日に焼いて、当日に飾りつけだぞ」
3「うん、分かったよ」
10「失敗してもやり直せるからな。焦んなくて済むだろ？」
3「うん、ちょっと安心かも……、あ、いや！ そんな事無いさ！」
10「明日はフルーツの飾り切りと生クリームの泡立てを教えてやるからな！」
3「ま、また泡立て？」
10「当然！ 誕生日のケーキに生クリームが無かったら、寂しいだろ？！」
3「そ、そりゃそうだよね」
10「泡立て大変だけど、頑張れよ！」
3「……はぁ～」
9「何だかんだと、良い先生っぷりを発揮してんじゃん？」
5「出来上がりが楽しみだな」
9「今日はティーダが付いて教えてるから、ま、無難な出来になるだろ？」
5「そうじゃなくて、初めて自分で作ったケーキを見るオニオンの反応が、さ」
9「すっげー感動するんじゃん！」
5「だといいな」
9「あいつさー、一個のケーキでこ～んなヘトヘトになってるのに、全部の種類を僕が作るとか言ってたんだよな～」
5「そんな事言ってたっけか」
9「恐いもの知らずだから、言えちゃうんだろうけどさ」
5「そういう頃が、おれにも有ったよ」
9「バッツ、今でも言いそうだけどな～」
5「ふ～～ん」
9「ナンだよ？」
5「そんな事言うジタンには、おれの愛情がたっぷり詰まったブラウニーあげないもんね～」
9「あああ、ナンか横で作ってると思ったら！ くれよー！！」
5「前言を撤回するか～？」
9「しますします、撤回でもナンでも！」
5「よーし！ 後でみんなで食おうな！」
9「それにしても、慣れてるヤツって本当に手際が良いんだな」
5「ん？ そりゃそうさ！ 初めてのヤツと一緒だったら困るだろ！」
9「ネギも経験を積めば、上手くなりそうか？」
5「手先が器用だから、良い線行くと思うけどな」
3「……」
10「ま、初めてだったらこんなモンだよな！」
3「僕の作った……ケーキ？」
9「何で疑問形なんだよ？！ おまえが作ったケーキだろ！」
3「うん、……そう、だよね」
5「お、外から見た感じだと、上々の仕上がりじゃないか」
3「そ、そう……かな？」
10「あとは、明日切って中を見てからだな！」
3「……う、うん」
5「お疲れ！ ブラウニー作っといたぞ、食うだろ？」
10「おー、美味そうッスね！ いっただっきま～す！」
3「……」
9「そんなに見てっと、ケーキに穴が開くぞー」
3「……えっ？！」
9「冗談だって！ ネギも疲れたろ？ バッツのブラウニー食えよ」
3「……うん」
【翌日・初めてのデコレーション】
10「よーし！ フルーツの飾り切りを教えてやるから、プチナイフを持て！」
3「う、うん！」
10「ちょっとくらい失敗してもいいから、手、切るなよ！」
3「……うん、でも失敗したくないなあ」
10「切るのに失敗したフルーツは、ケーキの真ん中にサンドしちゃうから、ちょっとくらい失敗しても問題無ーし！」
3「あ、……そうか、そうだね」
10「よーし、次は生クリームだ！ 昨日と同じくらいまで緩～く泡立てろ！」
3「……ん！」
10「そうしたら、スポンジケーキの上を平らに切る！ でもって、真ん中も水平に切る」
3「……水平に切るって、ちょっと難しいね」
10「多少曲がってもバレないから、そんな慎重に切らなくてもいいぞ！」
3「う、うん」
10「生クリームを適当に乗っけて、伸ばーす！」
3「ちょ、適当って……」
10「あとで綺麗にすっから、ここは適当でいいんだって」
3「ソレ、本当？」
10「本当！ んで、真ん中にフルーツを入れてサンドしたら、回りにクリームを付けてやっぱり適当に伸ばーす！」
3「……大丈夫かな」
10「ほい、残った生クリームを角が立つまで泡立てる！」
3「また、泡立てなんだ……」
10「文句言うなっつーの！」
3「……ん！」
10「よし！ こっからが本当の飾りつけだから、丁寧にやれよ！」
3「うん！ 大丈夫さ！」
10「生クリームの絞り方は、基本だけ教えっから、好きにアレンジしちゃっていいぞ！」
3「あれ？ ティーダ、クリームが均一に出てこないよ！」
10「力の加減を同じにしなきゃ、ドピュッと出てくっから気をつけろよ」
3「んん、……意外に難しいな」
10「難しかったら、フルーツを多めに飾って、生クリームを減らしちゃえよ！」
3「あ、……そうか」
10「オニオンがいっつも言ってる『頭の使いどころ』だからな！」
3「……わ、分かってるよ！」
9「余裕無いんだろうな」
5「一回作れば、余裕も出てくるさ」
9「あんなに緊張してるネギはなかなか見れないから、今日のうちにたっぷり見ておくか」
5「すぐに忘れてやれよ」
9「……バッツ」
5「ん？」
9「いつもクイックバトルで「ちゃんと頭使ってる？」とか言われてんのに、本当おまえって良いヤツ」
5「そんな事、言われてたっけ？」
9「……」
5「ナンだよ？」
9「……オレの感動を返せーーーっ！！！」
5「いてーっ！！」
3「……っ」
10「よっしゃあ、上出来！」
3「……本当に、ケーキになってる……」
9「当たり前だろ！ ケーキ作ったんだから！」
3「うん、……僕が、作ったんだよね……」
5「放心してないで、切ってみろって！」
3「……うん」
10「……うう、オレまで緊張してきたッス」
3「……っ！」
5「お、綺麗な層になってるじゃん」
10「よーし！ 合格だ！！」
3「……ありがとう、ティーダ」
10「今日の事は忘れんなよ！」
3「……うん、……きっと、ずっと覚えてる……」
10「……え？ え、と、そうじゃなくって……」
9「(ティーダ！)」←ティーダの口を塞いだ。
10「っ！！！ (当日は教えらんないから、手順を忘れんなって意味で言ったんだけど、オレ！！！)」
5「よし、食ってみようぜ！ きっと忘れられない味になるさ！」
3「……うん」
9「どうだ、自分で作ったケーキの味は？」
3「すごく、美味しい」
10「オレが教えたんだから、美味いに決まってるって！」
5「ティナの誕生日の前日と当日は、ティーダもおれも他のケーキ作りで忙しいから、おまえ一人でこのケーキを作るんだぞ」
3「……え？」
5「そんな心配そうな顔するなって！ 傍には居るから、分からなくなったら聞けば良いぞ、な？」
3「うん……あの……」
10「ん？」
3「よ、よろしくお願いします」
10「まっかしとけ！」
9「まだ日にちがあるから、毎日作りゃ少しは慣れるんじゃないか？」
5「ジタン、毎日食いたいだけだろ？」
9「バレてたか！」
10「毎日食ったら、デブになるッスよ！」
9「その分動いてっから、余裕余裕！」
3「……練習したいから、食べてくれるとありがたいんだけど……」
5「男所帯だから、試食したいヤツなんて探すまでも無いさ！」
9「あれ、そういえばスコールは？」
5「ああ、ティナと一緒に居るんじゃないかな」
3「……え？」
10「え？ 何でスコールがティナと一緒に居るッスか？」
5「オニオンが準備してる間、ティナに寂しい思いをさせない為」
9「まあ確かに、スコールなら安全牌だし、他のヤツもティナに近付きにくくなるし、仮に敵が襲って来ても安心だしで一石三鳥だな！」
5「安全牌？」
9「絶対オニオンの敵にならないって意味でさ！ もしかすっと、委員長やセシル以上に固いかも！」
3「……」
5「ふ～～ん、そうなのか～」
9「……バッツ」
5「ん？」
9「いや、ナンでもない(……後でスコールをからかうネタにしておくか)」
3「……大丈夫、だよね？」
9「大丈夫！ あいつは120％の鉄板だ！」
【おまけ・ティーダ先生のケーキ教室】
材料：無塩バター20g、全卵L3個、薄力粉90g、ベーキングパウダー小匙1/2、グラニュー糖90g、フルーツ適量、生クリーム適量／18cm焼き型
作り方は、ティーダ先生の仰る通り。
オーブンは180度で20～25分焼く。ティーダ先生の注意通りに予熱しておきましょう。
焼きあがったら竹串を刺して、生地が付いて来ないことを確認。
粗熱を取ったらデコレーション出来るけど、しっとりするんで一日寝かせる事をお奨め。
デコレーションは、各自お好みで！
今回は、ティーダにケーキ作りを教わっています。
ところで、9人分の『モーグリの気ぐるみ』は誰が作るのか？
本命⇒コスモス(＋委員長)、対抗⇒セシルとゴル兄、大穴⇒委員長(＋のばら)、無印⇒スコール＆クラウド。
【初めてのスポンジケーキ】
10「材料は全部メモったか？」
3「うん、準備は万端だよ」
10「作り方の順番も書いたな？」
3「もちろんさ」
10「じゃ、注意事項な」
3「いつでもいいよ」
10「材料はきっちり計って準備しとく、卵は常温、粉は最低三回ふるいにかける、泡立てはしっかり、粉を混ぜる時に泡をつぶさない、ダマにしない、焼いてる途中で釜を開けない」
3「ちょっと待って！ 説明が早くて追いつけないよ！」
10「んじゃ、ゆっくりもう一回な！ 特別サービスだかんな！」
9「ネギは何を作る事になったんだ？」
5「基本中の基本のスポンジケーキ、ティーダが得意って言ってたから任せてる」
9「簡単なのか？」
5「いや、基本だけど簡単じゃない」
9「おいおい、大丈夫なのかあ？」
5「本当はもっと簡単で失敗しないムースかナンかにしようと思ったんだけど」
9「わざわざ難しいのに替えたのか？」
5「うん、デコレーションに個性が出やすいし、本人がやる気満々だから、ティーダと相談してちょっとハードルを上げてみた」
9「ふ～ん」
5「それに、スポンジケーキだと、前の日に焼いて当日にデコレーションってスケジュールを組めるから、オニオンにもおれたちにも余裕が出来る」
9「へ～、そうなんだ？」
5「何よりも、オニオンは一個しか作らないから、適度な緊張をキープしつつ、その一個に目一杯の愛情を込めて作って欲しいんだよね」
9「料理に愛情は大事だよな！」
5「だな！」
9「いつもバッツの愛情たっぷりな飯食ってるスコールが羨ましいぜっ！」
5「ジタンだって、おれの愛情たっぷりな飯食ってるだろ？」
9「ま、友情たっぷりの飯も嬉しいけどな！」
10「よーし！ じゃ実践だぞ！」
3「うん、さっさと始めようよ」
10「こぼさないように丁寧に材料を計れよ！」
3「計ればいいんだね？ こんなの簡単だよ！」
10「こぼすなよ！ 特に砂糖と粉な！」
3「手元が狂うから、ちょっと黙ってて！」
10「……」
3「……はふ、終わったよ」
10「計る時に、息は止めなくていいんだぞ？」
3「だって、息で粉や砂糖が飛んだら困るじゃないか？」
10「ま、この程度息を止めても死なないからいっか！ よし次！」
3「バターを溶かし、焼き釜を温めておく、と」
10「よーし、順番は間違ってないな」
3「卵を割り砂糖を加え、混ぜるべし混ぜるべし……？」
10「ここは力仕事だから、頑張れよ！」
3「ねぇ、この前バッツが片手で卵を割ってたよね？ アレのやり方教えてよ」
10「おいおい、初心者は両手で丁寧に割んねーと、殻が入っちまうぞ！」
3「でもあの片手割り、簡単そうだったよ！」
5「ん、まー、形から入りたい気持ちも分からなくないから、気の済むようにやらせてみたらいいんじゃないか？」
10「殻ジャリジャリのケーキをティナに食べさせるっスか？」
5「どうせ今日のは試作で、食うのは男ばっかだ！ 気にすんなって！」
3「……っ！ あっ！」
10「ほら、言わんこっちゃないだろ！」
3「……っ」
10「仕方ねーから、入っちまった殻は極力全部除く！」
3「……」
10「残りは両手で丁寧に割れよ！」
3「……分かったよ」
10「何とか卵が割れたら、あとはひたすら泡立てだ！」
3「これを回せばいいんだね？」
10「遅い！ もっと早く！」
3「……もっと？」
10「もっと早く！」
3「……っ！」
10「よし！ そのスピードキープな！」
3「……まだ続けるの？」
10「まだ全然！」
3「……まだ？」
10「もっと白くなって、角が立つ手前まで泡立てるっ！」
3「かき混ぜてるだけで、本当に白くなんてなるの？」
10「オレを信じろって！」
9「角が立つってナンだ？ オレ、委員長の兜を思い浮かべたんだけど……」
5「生クリームの上がピーンと立ってる感じを「角が立つ」って言うんだ」
9「へぇ～」
3「……はぁ、はぁ」
9「なあ、ネギがバテてきてないか？」
10「まだまだぁ！」
5「確かに、ノリが体育会系になってきてるな」
3「ちょっと、……休みたいんだけど」
10「泡立ては一気にやらなきゃダメだ！ 突っ走れーっ！！」
3「……っ！」
9「ティーダがスパルタ先生に見える」
5「美味しいケーキには、愛情と体力が必要なんだ」
3「……ふぅ、ふぅ」
10「うん、まあ、このくらいでいっか！ この感じ、よ～く覚えとけよ！」
3「……うん、……はぁはぁ」
10「ほら、モタモタしないで粉をふるって中に入れる！」
3「ふ、ふるう？」
10「これがふるい、この中に粉を入れて周りをとんとん叩くと、ふるいにかけられた粉が下に落ちっから」
3「……うん」
10「強く叩くとこぼれっから、気を付けろよ！」
3「うん……(トントン)」
10「そんなにソーっとやってたら、明日になってもケーキ焼けないぞ～」
3「強く叩くなって言ったじゃないか」
5「ティーダ、最初くらいお手本見せてやれば？」
10「了解ッス！ 強さはこのくらい、リズミカルにトントンとな！」
3「……最初から見せてくれればいいのに……」
10「卵に粉を入れる時は、いっぺんに入れんなよ」
3「……」
10「そうそう、下からすくって、さっくりとダマにならないように掻き混ぜる！ 混ぜすぎんなよ！」
3「ティーダ、どれくらいが混ぜ過ぎかなんて、僕には分からないよ」
10「今日はオレが見ててストップって言うから、それまでサックリと掻き混ぜろ」
3「うん」
10「よーし、ストップ！」
3「……ふぅ」
10「続けて溶かしバター投入う！」
3「溶かしバター、と」
10「ムラにしないように掻き混ぜるぅ！」
3「……っ」
10「よーし！ 後は容器に流し込んで空気抜きしたら、焼き釜に入れるぞ！」
3「空気抜き？」
10「容器ごと、20cmくらいの高さからトンと落とせばいいんだ」
3「……こう？」
10「で、焼き釜に入れて20分～25分くらいかな。途中で釜を開けると、膨らまなくなるからな！」
3「ふぅ～……」
10「よし！ 焼きあがったら、今日はここまでだ！」
3「え？ デコレーションとかは？」
10「スポンジケーキは一日置いた方が美味くなるから、飾りつけは明日だ！」
3「へえ、そうなんだ？」
10「だから、ティナの誕生日前日に焼いて、当日に飾りつけだぞ」
3「うん、分かったよ」
10「失敗してもやり直せるからな。焦んなくて済むだろ？」
3「うん、ちょっと安心かも……、あ、いや！ そんな事無いさ！」
10「明日はフルーツの飾り切りと生クリームの泡立てを教えてやるからな！」
3「ま、また泡立て？」
10「当然！ 誕生日のケーキに生クリームが無かったら、寂しいだろ？！」
3「そ、そりゃそうだよね」
10「泡立て大変だけど、頑張れよ！」
3「……はぁ～」
9「何だかんだと、良い先生っぷりを発揮してんじゃん？」
5「出来上がりが楽しみだな」
9「今日はティーダが付いて教えてるから、ま、無難な出来になるだろ？」
5「そうじゃなくて、初めて自分で作ったケーキを見るオニオンの反応が、さ」
9「すっげー感動するんじゃん！」
5「だといいな」
9「あいつさー、一個のケーキでこ～んなヘトヘトになってるのに、全部の種類を僕が作るとか言ってたんだよな～」
5「そんな事言ってたっけか」
9「恐いもの知らずだから、言えちゃうんだろうけどさ」
5「そういう頃が、おれにも有ったよ」
9「バッツ、今でも言いそうだけどな～」
5「ふ～～ん」
9「ナンだよ？」
5「そんな事言うジタンには、おれの愛情がたっぷり詰まったブラウニーあげないもんね～」
9「あああ、ナンか横で作ってると思ったら！ くれよー！！」
5「前言を撤回するか～？」
9「しますします、撤回でもナンでも！」
5「よーし！ 後でみんなで食おうな！」
9「それにしても、慣れてるヤツって本当に手際が良いんだな」
5「ん？ そりゃそうさ！ 初めてのヤツと一緒だったら困るだろ！」
9「ネギも経験を積めば、上手くなりそうか？」
5「手先が器用だから、良い線行くと思うけどな」
3「……」
10「ま、初めてだったらこんなモンだよな！」
3「僕の作った……ケーキ？」
9「何で疑問形なんだよ？！ おまえが作ったケーキだろ！」
3「うん、……そう、だよね」
5「お、外から見た感じだと、上々の仕上がりじゃないか」
3「そ、そう……かな？」
10「あとは、明日切って中を見てからだな！」
3「……う、うん」
5「お疲れ！ ブラウニー作っといたぞ、食うだろ？」
10「おー、美味そうッスね！ いっただっきま～す！」
3「……」
9「そんなに見てっと、ケーキに穴が開くぞー」
3「……えっ？！」
9「冗談だって！ ネギも疲れたろ？ バッツのブラウニー食えよ」
3「……うん」
【翌日・初めてのデコレーション】
10「よーし！ フルーツの飾り切りを教えてやるから、プチナイフを持て！」
3「う、うん！」
10「ちょっとくらい失敗してもいいから、手、切るなよ！」
3「……うん、でも失敗したくないなあ」
10「切るのに失敗したフルーツは、ケーキの真ん中にサンドしちゃうから、ちょっとくらい失敗しても問題無ーし！」
3「あ、……そうか、そうだね」
10「よーし、次は生クリームだ！ 昨日と同じくらいまで緩～く泡立てろ！」
3「……ん！」
10「そうしたら、スポンジケーキの上を平らに切る！ でもって、真ん中も水平に切る」
3「……水平に切るって、ちょっと難しいね」
10「多少曲がってもバレないから、そんな慎重に切らなくてもいいぞ！」
3「う、うん」
10「生クリームを適当に乗っけて、伸ばーす！」
3「ちょ、適当って……」
10「あとで綺麗にすっから、ここは適当でいいんだって」
3「ソレ、本当？」
10「本当！ んで、真ん中にフルーツを入れてサンドしたら、回りにクリームを付けてやっぱり適当に伸ばーす！」
3「……大丈夫かな」
10「ほい、残った生クリームを角が立つまで泡立てる！」
3「また、泡立てなんだ……」
10「文句言うなっつーの！」
3「……ん！」
10「よし！ こっからが本当の飾りつけだから、丁寧にやれよ！」
3「うん！ 大丈夫さ！」
10「生クリームの絞り方は、基本だけ教えっから、好きにアレンジしちゃっていいぞ！」
3「あれ？ ティーダ、クリームが均一に出てこないよ！」
10「力の加減を同じにしなきゃ、ドピュッと出てくっから気をつけろよ」
3「んん、……意外に難しいな」
10「難しかったら、フルーツを多めに飾って、生クリームを減らしちゃえよ！」
3「あ、……そうか」
10「オニオンがいっつも言ってる『頭の使いどころ』だからな！」
3「……わ、分かってるよ！」
9「余裕無いんだろうな」
5「一回作れば、余裕も出てくるさ」
9「あんなに緊張してるネギはなかなか見れないから、今日のうちにたっぷり見ておくか」
5「すぐに忘れてやれよ」
9「……バッツ」
5「ん？」
9「いつもクイックバトルで「ちゃんと頭使ってる？」とか言われてんのに、本当おまえって良いヤツ」
5「そんな事、言われてたっけ？」
9「……」
5「ナンだよ？」
9「……オレの感動を返せーーーっ！！！」
5「いてーっ！！」
3「……っ」
10「よっしゃあ、上出来！」
3「……本当に、ケーキになってる……」
9「当たり前だろ！ ケーキ作ったんだから！」
3「うん、……僕が、作ったんだよね……」
5「放心してないで、切ってみろって！」
3「……うん」
10「……うう、オレまで緊張してきたッス」
3「……っ！」
5「お、綺麗な層になってるじゃん」
10「よーし！ 合格だ！！」
3「……ありがとう、ティーダ」
10「今日の事は忘れんなよ！」
3「……うん、……きっと、ずっと覚えてる……」
10「……え？ え、と、そうじゃなくって……」
9「(ティーダ！)」←ティーダの口を塞いだ。
10「っ！！！ (当日は教えらんないから、手順を忘れんなって意味で言ったんだけど、オレ！！！)」
5「よし、食ってみようぜ！ きっと忘れられない味になるさ！」
3「……うん」
9「どうだ、自分で作ったケーキの味は？」
3「すごく、美味しい」
10「オレが教えたんだから、美味いに決まってるって！」
5「ティナの誕生日の前日と当日は、ティーダもおれも他のケーキ作りで忙しいから、おまえ一人でこのケーキを作るんだぞ」
3「……え？」
5「そんな心配そうな顔するなって！ 傍には居るから、分からなくなったら聞けば良いぞ、な？」
3「うん……あの……」
10「ん？」
3「よ、よろしくお願いします」
10「まっかしとけ！」
9「まだ日にちがあるから、毎日作りゃ少しは慣れるんじゃないか？」
5「ジタン、毎日食いたいだけだろ？」
9「バレてたか！」
10「毎日食ったら、デブになるッスよ！」
9「その分動いてっから、余裕余裕！」
3「……練習したいから、食べてくれるとありがたいんだけど……」
5「男所帯だから、試食したいヤツなんて探すまでも無いさ！」
9「あれ、そういえばスコールは？」
5「ああ、ティナと一緒に居るんじゃないかな」
3「……え？」
10「え？ 何でスコールがティナと一緒に居るッスか？」
5「オニオンが準備してる間、ティナに寂しい思いをさせない為」
9「まあ確かに、スコールなら安全牌だし、他のヤツもティナに近付きにくくなるし、仮に敵が襲って来ても安心だしで一石三鳥だな！」
5「安全牌？」
9「絶対オニオンの敵にならないって意味でさ！ もしかすっと、委員長やセシル以上に固いかも！」
3「……」
5「ふ～～ん、そうなのか～」
9「……バッツ」
5「ん？」
9「いや、ナンでもない(……後でスコールをからかうネタにしておくか)」
3「……大丈夫、だよね？」
9「大丈夫！ あいつは120％の鉄板だ！」
【おまけ・ティーダ先生のケーキ教室】
材料：無塩バター20g、全卵L3個、薄力粉90g、ベーキングパウダー小匙1/2、グラニュー糖90g、フルーツ適量、生クリーム適量／18cm焼き型
作り方は、ティーダ先生の仰る通り。
オーブンは180度で20～25分焼く。ティーダ先生の注意通りに予熱しておきましょう。
焼きあがったら竹串を刺して、生地が付いて来ないことを確認。
粗熱を取ったらデコレーション出来るけど、しっとりするんで一日寝かせる事をお奨め。
デコレーションは、各自お好みで！
